カンカンのなかみ

可愛い缶に大事なものを詰め込んだ

アラサー独身女子は、共感必至の本です。

読み終えました。

綿矢りさ『私をくいとめて』

私をくいとめて

私をくいとめて

 

 新聞連載されていた作品のようです。

まもなく33歳となる独身OLが主人公。

おそらく似たような境遇の人ならみんな抱えていそうな孤独といった尽きない不安。そこに気付いた時に、自分の脳内に話相手を見つけます。

そんなお話。

 

私自身もアラサー独身の身としては、非常に共感する小説でした。

共感したところにマーカーを引きなさいと言われたら、ページが蛍光色だらけになっちゃうかも!!

 

少し、ご紹介しましょう。

まず、脳内にいる「A」との出会いのところ。 

 

「夜にはっきり感じた孤独は忘れられません。孤独は、人生につきものです。誰かといても、癒やされるものではありません。はっきりと意識してはだめです。ふわふわと周りに漂っているときは、息をひそめて吸うのを避けるのです」

「自分が独りぼっちだって、気づいちゃいけないの?」

「気づくのはしょうがない、でもうまく逃げて。変に意識しない方がうまくやれます。普段意識せずまとわりつかせるだけならいいですが、意識したとたん、どうやってこんな深い海で泳いでいたんだろうと息苦しくなって、なにもかも不自然な、ぎこちない動きになって溺れてしまいます。」

 

そうなんですよ!夜ってなんだか危険なんですよ!

昼間は働いて、人に囲まれて、帰ってきてテレビ眺めたりしている時なんかに、そっと忍び寄ってくる気配。

これはもちろん、独身・既婚を問わないと思います。人ってどんな境遇であれ寂しさを感じるんだと思う。

 

物語も終盤、主人公が人と付き合うことにふとハードルを感じたとき。

 

「…(略)。自分が根本的に人を必要としていないことがショックだったの。人と一緒にいるのは楽しい。気の合う人だったり、好きな人ならなおさら。でも私にとっての自然体は、あくまで独りで行動しているときで、なのに心はゆっくり蝕まれていって。その矛盾が情けなくて」

「オレンジジュースを飲まないと死んでしまう人はいますか?」

「めったにいない」

「水を飲まないと死んでしまう人はいますか?」

「人間はみんなそうだよ」

「では、オレンジジュースが好きな人はいますか?」

「いっぱいいる」

「そうです。根本的に必要じゃなくても、生活にあるとうれしい存在はたくさんあるんです。というか、私たちはそういうものばかりに取り囲まれて生きていますよ。根本的に、なんて思いつめなくていい。…(略)。」

 

私も、一人が結局1番なんじゃないか、過ごしやすいから自分が選択して結果としての今 なんじゃないかってよく思います。

私は寂しいときに寂しいと言える強さはありません。

よく、人間として強さの一面を表す例やアドバイスとして一人の時間も楽しめる女性像を出されることがあるけど…

強くて独りなわけじゃないって感じます。

ちゃんと他人と人間関係を築いていける中にこそ強さって必要なんじゃないかな。

でも、この「A」の提案するオレンジジュースの考え方、いいなと思いました。

あると嬉しい、そんな気楽さで人間関係も築けていけたらなぁ。

 

他にもですね、主人公のもう少し人に好かれるためにどうしたらいいのかという質問に、「A」は語尾にハートマークをつけるようなしゃべり方をすればいいと提案したり。これ、自分に言われてる気になりましたよ!

 

主人公がおひとりさまの総本山ともいえるディズニーランドをひとりで攻略する方法を思案する描写はとてもリアルで、赤べこのようにうなずきました。(笑)

 

イタリアに向かう飛行機の中で、「か、勝手に揺れてろ…」とつぶやくところは、著者の『勝手にふるえてろ』のタイトルを彷彿させ笑えました。

 

 

仕事もあるし、話せる同僚も友人もいる。家族も健在だし、恋人候補も現れる。趣味を満喫したり、旅行にだって行くし、洋服だって買っちゃう。

主人公の毎日だって、決して不幸じゃないんですよ。

私だって、もちろん自分が不幸だと感じてるわけじゃない。

ただなんとなく、人付き合いがめんどくさい(というか、たぶん、本当はこわい)、でも寂しい。このままじゃいけないの?

って気持ちに寄り添うような本でした。